Tea Video Letter と Tea of Grace について(日本語)
お茶に興味を持っている外国人の友人に向けて作ったお茶のビデオ【Tea Video Letter】は、約二年前に始めました。
友人以外にも観てくださる方があり、日本から離れている場所でこんなに多くの人が日本のお茶や文化に興味があるんだと驚かされました。
ビデオでは、「日本のお茶に興味を持っている外国の人たちが自分たちの持ち得る道具でどのようにお茶の時間を楽しめるだろう?」ということと、「日本にはこんな素晴らしい文化があって、一つの文化の中に様々な要素(人との交流、自然を敬い季節の移り変わりを愉しむこと、様々な美(美術工芸/お道具/書画詩/美を創る人の手/花など)、人からの学び、他者や道具への配慮・丁寧な所作、自身の中に静けさを持つこと等)があって楽しむきっかけや方法、自分の日々への生かし方も様々だということを伝えたいな」と思って作っていました。
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祖母が縁を結び、母が長く学んでいたこともあって、ずっと身近にあった煎茶道。
赤ちゃんの時から稽古やお茶会の場に連れていってもらっていました。お稽古やお運びのお手伝いのようなことも小学生の間までしていました。
その後、学校の勉強や部活、学校内外での活動で忙しい日々になり、お茶からは長い間離れていました。高校では自分が以前から英語を学び様々な国の人たちと交流したいという金銭的に厳しい夢を家族に叶えてもらい、10か月間カナダの高校で学ばせてもらいました。
けれど、その前後くらいから主に精神面の病になり、自分の中でうまくバランスがとれなくなってしまいました。それから長い間辛く苦しい時期が続きました。当時の日本は今のように例えば鬱病などの認識や治療がオープンではなく、周りの人たちみんなが驚いてしまいどうすればいいかも分からず、自分でも模索しながら傷つくことも多くありました。もがけばもがくほどに沈んでいくような時間でした。
そのこともあり、周りの友人たちのように大学で学んだり、きちんと就職をして働くことは叶わなかったけれど、5年ほど前に体調も徐々に良くなってきたこともあり、お煎茶のお茶会のお手伝いをする機会をいただきました。その時に「お茶ってこんなに面白いんだ、素晴らしいことがたくさんあるんだ」と気づいた自分がいました。母以外の方からお茶を学びたい思いもあり、京都でお抹茶を学ぶ機会を持つこともできました。たくさんの美と学びをくださった京都の素晴らしい先生にはずっとずっとずっと感謝しています。それからも調子の浮き沈みはあったけれど、お茶の道ということに関してはずっと承認・祝福されているという感覚があり、心から感謝しています。
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お茶を本格的に学び始めてから、様々な要素があると実感したと同時に、人それぞれのお茶の形や楽しみ方があると感じました。その中には自分が心から素敵だなぁと思うもの、憧れるけれど自分がしたいアプローチとは違うなと感じるもの、こんなお茶にはしたくないなというもの、様々でした。
その中で自分自身が本当にしたい『お茶』って何だろう? と考える機会が増えました。
それが【Tea of Grace】でした。
自分の過去の経験もあり、一杯のお茶やお茶と共に楽しむ時間がその人にとって必要な静けさ、穏やかさ、和やかさ、温かさ、愛情であったり、忙しい日常からの束の間の逃避になれば、という想いが強くありました。
私にとって、お茶はほとんど宗教と言ってもいいくらい、そして、お茶を淹れる過程や所作、時間は祈りに似ていると思うようになりました。
一杯のお茶を淹れるとき、さまざまなことを考えます。うつくしい自然のこと、たとえば水がどこから来たか、お茶の葉はどこから来たか、お道具やお菓子の材料はどこから来たのか... ほとんどが自然から生み出されたものだと思います。それからそれらを創る人、人の手を思い浮かべます。自分が想う人たちのことを考えます。
実際は必要とする人のところへ行って一杯のお茶をささげたい、一緒に時間を過ごすことが、その人の手を握ることのような行為や時間になるんじゃないか... と思うし、それができない現実のもどかしさもあるけれど、今私がビデオを通して少しでも穏やかな空気や自分の届けたい思いー祈りや願い、思いやりの気持ち、慈愛・慈悲(grace)、愛情 が伝わることを願いながらお茶を淹れています。
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世の中にはたくさんの悲しい出来事や困難な瞬間や信じられない人の言動や残酷な現実があって、多くの人は日々の慌ただしさに追われて過ごしていて、誰にとっても人生は決してやさしいものではありません。けれど、その中で美しく素晴らしい瞬間、もの、景色、人とのかかわりに巡り合うことも必ずあります。その出会いを大事にして、これからも毎日の日々やお茶の道を進んでいきたいです。
長文になりました。私個人の考えや個人的な事情を書いたことで不快になる方がいないことを願いながら... たくさんの方々に感謝しています。
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